
早朝の名タク中川基地。出社した松永正広運転手(49)のもとに、数枚の指名予約ファックスが入っている。パラパラと目を通すと、おなじみのお客さまがほとんど。お迎えの場所や時間も、お送り先も。いつもの老人保養施設へ、いつもの病院へ。
道順はもちろん、お客さまの状態までよく知っている。どんな介助をすればいいかも。いつも誠心誠意を心がけているから、指名をもらうと率直にうれしい。お客さまにとってみれば安心して任せられる松永運転手は、お抱え運転手のような存在なのかもしれない。
約940人の名タク運転手が介助に活躍
タクシーでの介助とは、身体の不自由なお客さまが乗降するとき、手や肩をお貸しして手助けすること。ご要望があれば玄関口から車のドアまで移動する支えになったり、車イスを押すことも。
介助できるのは、専門の介助講習を受けた人。名タクでは現在、約940人の運転手が受講を修了し、「介助タクシーを」とのご注文に応じています。
また体の不自由な方のための特別車両としてウェルキャブがあり、リピーターが急増中です。これは後部座席が外に90度回転し、乗りやすく工夫されたもの。ドアも20センチほど広く、足乗せやひじあてがついています。
このほか車イスごと乗れるリフト付きのジャンボタクシーは、家族の小旅行などに人気です。
車イス介助のコツは
「人に喜ばれることをしなくちゃ」と、松永運転手が講習を受けたのは2年半前。学んだ介助のコツとは。
「車イスを扱うときは、前傾にしないこと。だから下り坂や階段を下りるときは、後ろ向きにしてゆっくりと。コーナーは前輪を上げてターン。止めるときは平らなところに…」
走行中も低速を心がけ、振動は極力避ける。急ブレーキや急発進はもってのほか。エアコンの温度調節にも心を配る。
「高齢のお客さまは、自分の両親と同じくらいの世代。父親を3年前に肺がんで亡くしたので、病院通いのつらさも、周りの苦労もよく分かるんです。だから自分の親の面倒を見ているようなつもりで」その気持ちがお客さまに通うのか、「きょうはありがとう。気分よく乗れたよ」という言葉をいただくこともしばしば。やりがいを感じる一瞬だ。
外にどんどん出かけてほしい、という思いもある。車イス生活になると出歩くのがおっくうで、引きこもりがち。「でも」と松永運転手は言う。
「あるとき身体障がいの方を水族館にお迎えに行ったら、本当に楽しかったわ、という笑顔に迎えられて、こちらが感動したんです。外に出ると発見があるし、友だちもできる。外に出ることを、片腕になるという形で手助けしたいんです」
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介助タクシー、ウェルキャブ、リフト付きジャンボタクシーのお申し込みは、配車センター(TEL331・2211)まで。
また車イスが必要な方はその旨お申し出下さい。すべてタクシー運賃のみでOK、特別な料金はいりません。
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| 座席が回転して外に飛び出すウェルキャブは「乗りやすい」と人気 |
| 運転手が介助で車を離れるときは、フロントにその旨を記したカードを置いておきます。少々時間がかかりますが、ご理解下さい。 |
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