この記事は2004年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

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聞き手(名鉄交通社長)
金子暁男

 小粋でほのぼのしたイラストが人気の茶畑和也さん。名古屋パルコなど企業のイメージキャラクターでもおなじみで、雑誌や新聞、テレビ、本など、多方面でご活躍中です。ほんわかとしたご本人の雰囲気はイラストそのまま。フランスや日本での楽しいタクシー体験を語っていただきました。


金子 (近著)「カカポのてがみ」、拝見しました。これは本当の話をベースにしているんですね。
茶畑 はい。カカポという、ニュージーランドの絶滅に瀕した鳥がいまして、それを題材に友だち(岡田稔氏)が文章を書き、僕がイラストを描いたんですね。二人でニュージーランドに行って、自然保護省の方に特別なところに入れていただいて、見てきたんですけども。
金子 ほう。
茶畑 ニュージーランドは(飛ぶ必要がないから)飛べない鳥というのがすごく多くて、絶滅の危機に瀕しているんですよ。カカポも一時50羽くらいになったんですけど、僕たちが行った年に24羽くらい孵って。100年くらいの保護の歴史のなかで初めてだったので、「岡田と茶畑が来たおかげだ、またおいで」と言われて。
金子 それはよかったですね。名古屋名物の絵はがきも、楽しく拝見しました。これはどういういきさつで描かれたんですか。
茶畑 高島屋がオープンするときに、東急ハンズがポストカードを作ろうというので、名古屋名物を描いてみようかと。食べ物のほかに、金鯱号とか名古屋城とか、名古屋関係は8種類くらいあります。
金子 私どももタクシー協会全体で、今年秋から観光タクシーを本格的にスタートしようということで、養成講座を7月から始めるんですよ。名所だけじゃなくて、食べ物とか名古屋弁も含めて勉強しようと。
茶畑 名古屋弁というのは、日本三大美語のひとつだったそうですね。食べ物屋のおかみさんで、すごいきれいな名古屋弁の方がいらっしゃって、「これはすごいな」と思ったことがあります。


金子 お子さんのころから、イラストの道へと?
茶畑 描き始めたきっかけは、中学くらいのときですね。洋画の本を見て、カトリーヌ・ドヌーブとかアラン・ドロンとかを、点写で描いてたんです。で、出したら本に紹介していただいて、「気分いいな」と(笑)。それからアパレルの会社に勤めていたころに絵が描きたくなって、パリの1年のオープンチケットを買って、そのまま行ったんです。
金子 向うでは、どうやって勉強をなさったんですか?
茶畑 「アトリエ17」というところに入ったんです。ヘーターさんという方がやってたんですが、ミロと一緒にアトリエを始めた人で、銅版の一版多色刷という技法を開発したんですよ。そこで版画の勉強をして。
金子 じゃあ版画もおやりになるんですか。
茶畑 日本に帰ってきたら、インクも紙もすごく高くて、場所がないとプレスも置けなくて、できなかったんですね。でもフランスにはそれから7回くらい行きました。いつも2週間から1カ月くらい滞在して。4年前にはブルターニュで、陶芸家と2人展をやりました。
金子 やっぱりフランスは魅力的ですか。
茶畑 最初に行ったところが、懐かしくて戻るんですね。で、最初の1980年に行ったときに、カフェに花束を売りに来る人がいたんです。チャプリンに似た風貌の人で。その人が4年前に行ったときも、売りに来たんですよ。20年間、ずっと同じ人が売ってたんです。そういう人を受け容れる街というのはすごいですよね。人間本来の楽しさとか、粋さとか。人にも余裕がありますよね。


金子 フランスでは、タクシーにお乗りになりましたか。
茶畑 最初に行ったときは、「あいうえお」くらいしか言えなかったので、タクシーに乗るのはすごい憧れだったですね。そのころはほとんどプジョーで、ときどきシトロエンとかルノーがあったりして。その後、行くようになってからは、タクシーにホテルの番地を言って、「ウィ」って言ってくれると「やった!」と(笑)。でも空港からパリ市内までのタクシーは、ものすごく飛ばすんですよね。120〜150キロ出すんで。だからいつもバスを使って。
金子 運転も乱暴なんですか。
茶畑 乱暴な人が多いですね。で、助手席は自分のプライベートなので、犬を乗せたり。
金子 お国柄ですね。中国では、お一人のお客さまは前に乗るんですよ。「私はあなたの友だちだから、悪いことはしませんよ」という意味なんです。
茶畑 へえ。
金子 名古屋では、タクシーをご利用になる機会はおありですか。
茶畑 今は八事に住んでいますので、栄の方に飲みに行くときはほとんどタクシーです。でも週1回飲みに行っても、大した金額にはならないので、安心が買えると思えば。
金子 ありがとうございます。ご出身が高知県でいらっしゃるそうですから、お酒も日本酒を?
茶畑 いえ、アルコールが入っていれば、何でも(笑)。最近はそんなに飲まないんですけど、昔は運転手さんによくご迷惑を・・。窓からずっと吐きながらとか(笑)、寝ちゃって、運転手さんが起こしても全然起きなかったとか。
金子 面白い運転手に出会ったご経験はおありですか。
茶畑 確か名タクさんでしたよ。札幌出身の運転手さんがいたんです。雪の日にすっごい喜んで、「任せてください!」って。チェーンもなしで、うまいんですよ。滑らない。滑っても計算できてる。「今日は私が稼ぎます!」って言って。(笑)


金子 お描きになる人間の顔は、輪郭がありませんね。これはフランスの影響ですか。
茶畑 きっかけはアパレル会社にいたころなんですが、山に登っている間中、トンボがついてきて、「トンボの絵を描こう」と、目を描いて。「人も描こう」と思って、輪郭を描くと形が決まっちゃうもんですから、輪郭なしで描き始めたんですよ。
金子 なるほど。今年、展覧会のご予定は。
茶畑 10月に東京の青山で。ギャラリー6軒を同時に、名古屋のイラストレーターだけでジャックしちゃったんです。あと名古屋では毎年やっていまして、今年も11月に個展を。
金子 テーマみたいなものはあるんですか。
茶畑 昨年くらいから「心」をテーマに、ちょっと温かくなるような絵を。一杯のコーヒーと一緒で、生活のなかで心をリラックスしてもらえたらと。
金子 いいですね。今日は楽しいお話をありがとうございました。


ちゃばた・かずや
1955年、高知県生まれ。80年に渡仏、85年に雑誌「ELLE JAPON」に「貧乏画家の巴里絵日記」を連載し、注目される(後に単行本化)。86年、朝日広告部門賞受賞。現在は毎日新聞の連載企画「天職一芸」のイラストなどを担当。名古屋市昭和区在住。

6月10日付けで名鉄交通社長に、前副社長の金子暁男が就任いたしました。

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