この記事は2005年3月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

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聞き手(名鉄交通社長)
金子暁男


 心にしみるディープ・ヴォイスで人気のジャズシンガー、ケイコ・リーさん。実力派のトップシンガーとして国内外で活躍、「愛・地球博」では名フィルとの共演が予定されています。名古屋が大好きという根っからの「名古屋っ子」で、土地を愛し、家族を愛し、友人を愛し…。そんな温かい人柄も人気のひとつなのでしょう。


金子 昨年秋に出されたCD、お聴きしました。夜、ウィスキーを飲みながら(笑)。ジャズをお選びになったきっかけというのは、何かおありですか。
ケイコ 偶然なんですよ。若いころ、いろんなジャンルの歌手のピアノ伴奏をしてたんですけど、「声がヴォーカルに向いてるからやってみたら」と勧められて。で、「ジャズがいいんじゃない?」って。私は歌手になる気持ちはさらさらなかったんですけどね。どちらかというと、なりたくなかった。(笑)
金子 そうなんですか。
ケイコ でも始めてしまうと、後戻りができなかったですね。最初は甘く考えていたんですけど、一端入ると厳しさが分かってきて。一回一回を真剣に、ていねいにと…。
金子 なるほど。
ケイコ いつも自分に言い聞かせているんですよ。ていねいに歌う。ていねいに演奏する。ていねいに物を扱う。これをクセにしようと。若い子にもよく言うんです。クセにすれば自然にそうなるからと。どんな世界でもそうだと思いますけどね。

金子 もともと名古屋のご出身だそうですね。
ケイコ はい。出身は半田なんですけど、もう20年くらい名古屋に住んでいます。
金子 東京に行こうというようなことは、お考えにならないんですか。
ケイコ 必要性がないと思うんです。生活が一番大事ですから。名古屋なら家族もいるし、友だちもいっぱいいるし。地に足のついた生活をしてないと、音楽ってできないかなと。
金子 名古屋はファンの方も、たくさんいらっしゃるんでしょうね。
ケイコ ええ。地元出身ということで、温かくしてくださるんですよ。コンサートをやるとすごく盛り上げてくれて。で、遠くからわざわざ見に来てくださる方もいるんです。九州とか、東京とか。ホームグラウンドでやるケイコ・リーを見たいといって。
金子 ほお。以前はラブリー(栄にある老舗のライブハウス)でよく歌ってらっしゃったそうですが、今はどうなんですか。
ケイコ 年に数回ですね。ああいう小さいところでやって、お客さんと触れ合うのが好きで。歌がひと段落したらすぐ客席に入って、お客さんとお話したり…。
金子 そういうのはいいですねー。
ケイコ もともと生活に密着したものですからね、ジャズというのは。宮殿で演奏するものでもないし(笑)。名古屋は、「ここに行くと楽しいだろう」というお店が数件あって、アーティストの人たちが集まってくるので、交流が広がるんです。東京だとアーティストが店でバッタリ会って飲み明かすとか、まずない。そういう意味でも、名古屋は独特のものが生まれる土地ですね。

金子 お仕事柄、タクシーにお乗りになる機会は多いんでしょうね。
ケイコ はい。今日も乗ってきました、名タクさんに。(笑)
金子 それはそれは。何かご不満やご注文はございませんか。
ケイコ いえいえ。名タクさんはご親切ですよぉ。お名前をおっしゃってくださるの、あれは気持ちがいいですね。乗る側の立場からすると、流しとか止めて乗るとき、緊張するんですよ。でも「どうぞ!」と明るくおっしゃって、お名前を言ってくださると、気が楽になるので。安心感がありますね。
金子 ありがとうございます。
ケイコ ジャンボタクシーは、駅に常時いないんですか? 予約だけなんですか?
金子 名古屋駅ですと、新幹線駅の太閤通口に数台、待機しています。
ケイコ あ、そうなんですか。待機していてくれると、すごくありがたいです。よく使うので。
金子 お顔を覚えている運転手もいるでしょうね。
ケイコ そうなんです。「この前も乗られましたね!」とか、「名前はよく知ってますよ」とか。私はしゃべるのが大好きなので、必ず運転手さんとお話しして。いろいろ話してくださると、うれしいですね。
金子 それもお客さまに合わせないといけないところがありまして。お話ししたくないお客さまもいらっしゃるんですね。
ケイコ 運転手さんはよく読んでるんですよね、その場の空気を。だから神経すり減らすお仕事ですよね。本当にお体を大事にして頑張っていただきたいですね。
金子 ありがとうございます。
ケイコ 特に夏場。いつもかわいそうだなと思うんです。ずっとクーラーの中で。「大変ですね」と言うと、「腰が悪くなってね‥」とか。
金子 運転手の立場で考えてくださるというのは、ありがたいお客さまですね。
ケイコ 私はいつも乗せていただいているという気持ちでいるんです。で、いい運転手さんと出会うと、降りたあとが気持ちいいんですね。爽快感があって。

金子 地方でも、タクシーにお乗りになる機会は多いんでしょうね。何か印象に残るご経験はおありですか。
ケイコ よその都市で乗って運転手さんとお話しすると、その土地の方言が聞けて面白いですね。「あ、こんな方言なんだ」って。
金子 いかにもその土地に来たんだ、という感じがしますね。
ケイコ ええ、そうなんです。で、郷土料理のおいしいお店とか、名所とか教えてくださって。お城のあるような都市に行きますと、歴史にたけた方が多くいらっしゃって、勉強になるんですね、こちらも。お話もすごく簡潔で面白いですよ。

金子 次のCDの予定などはございますか。
ケイコ 今、温めているところなんです。今年は10周年なので、それに向けて何かできればと。試行錯誤しながら、生きていければいいかなと思うんです。百点はいらないので、なるべく幸せに楽しく、毎日を過ごせたら。で、目標に向っていって、何かのタイミングで、ふと自分がステップアップしたことに気がつくといいなと。
金子 万博でもお歌いになられるそうですね。
ケイコ ええ。6月25日と26日に。名フィルとやるのはかなり久しぶりなんです。オーケストラというのも楽しみだし。あまりこういう機会はないので、ぜひ皆さんに来ていただきたいですね。リッチな気分になって帰っていただけるんじゃないかと思います。
金子 楽しみですね。私もぜひお伺いします。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。


けいこ・りー
95年、アルバム「イマジン」でデビュー。昨年10月には最新アルバム「フーズ・スクリーミン」をリリース。スイングジャーナル誌による読者人気投票の「女性ジャズ・ヴォーカル部門」で8年連続1位を獲得。4月 15日(金)に名古屋ボトムライン(問合せ/741・1620)、6月25日(土)・ 26日(日)には愛知万博「EXPOドーム」(問合せ/569・2179)でライブを行う。

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