昭和１２年から始まった日中戦争で石油は統制下に置かれ、１６年にはアメリカが日本への石油輸出をすべて禁止したことで、日本の燃料は困窮を極めることになった。ガソリンは使用禁止になり、薪や木炭、亜炭、コーライトなどがタクシーの代用燃料になった。どのタクシー会社も自家工場を持ち、代燃車を整備して走らせていた。
終戦になってからも燃料不足は深刻で、代用燃料ですら、なかなか手に入らなかった。ただし名タクに限っては例外で、当時の取締役支配人が亜炭炭鉱を所有していたため、コーライトに加工して名タクに独占的に供給していたのだ
。
コーライトは燃焼効率が格段に高く、しかも極めて安価だったから、大変な戦力となった。このため名タクは燃料問題に悩まされることなく、全力で改造車を組み立てることができた。
一方で時代は電気自動車に期待を集め、各社は先を争って改造に励んだ。昭和２３年の市内自動車総車両数１６００両のうち、電気自動車が４分の１を占めていたといわれる。
しかし当時の電気自動車は、電池の重さが５００キロ、定員乗車で１.３トンにもなった。ブレーキも効きが悪く、故障も多い。おまけに充電に６〜８時間かかり、一度の充電で８０キロしか走れなかった。
結局、電気を含めた代燃車は２９年までに一掃し、国産ガソリン車がこれに置き換えられた。
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