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園田 淳(南部第1営業基地)
今年からタクシードライバーになった。何もかもが未体験。お客さまを乗せてハンドルを握るのも、おまけに名古屋の街も初めてである。
当初は毎日のように新しい不安や戸惑いが湧いて出てきた。
てこずったのは(今でもだが)名古屋の地名、これに尽きる。何もわからないんだから。道路地図と首っ引きで覚えこんだ。
「シロヤマ(城山)まで」「かしこまりました」と目的地へ。
「ここは違うよ」と言われ、そうか白山はハクサンと読むのかと初めて知った。
「津島まで」「はい、三重県の津市までですね」
冷汗三斗の思い。知らない地名を告げられるたびに、心臓が縮みあがったものだ。
けれども最近では図々しくなったのか、知らないことは知らないと、はっきり言うのが平気になった。お客さまに正直に伝えて、道順を教えてもらうのである。初めからそうすればいいと思われるかも知れないが、慣れない新人のうちは、この「知らない」が口にできないのである。
それを口にできるようになって、とてもラクになった。すると余裕らしきものも生まれてくるから、お客さまとの会話も広がっていくのである。
深夜、宿泊先のホテルまでご夫婦をお送りした。京都から来られたという。
学生時代は京都だっただけに、なつかしくて話が弾んだ。しかもご夫婦の住まいが当時の下宿先と同じ地域。大いに盛り上がって、翌日の名古屋観光もとお願いされたほど。
この出来事をきっかけに、一期一会という言葉を強く意識するようになったと思う。
人間、どこにどう縁がつながっているのか、わからない。そう思えばお客さまとの会話にもつい熱が入ろうというものだ。
さしあたり当方の得意ネタ(話題)は二つある。一つは職業がら身についた安全運転。教習の先生よろしく、乞われればアドバイスさせてもらう。
もう一つは禁煙の話である。5月からは名古屋市内の全タクシー実施となったから関心は高い。実は当方、相当のヘビースモーカーだった。それが11年前にすぱっとやめた。その体験談で盛り上がるのである。
もっとも煙草をやめたおかげで、それからは太りすぎの苦労が始まった。ではその防止策は…いやはや車内の話題は尽きることがない。 |
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