この記事は2008年3月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。
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聞き手(名鉄交通社長)
金子暁男 |
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名古屋競馬場に所属し、「名古屋競馬のホープ」ともいわれる女性騎手、宮下瞳さん。日本女性の最多勝利記録をもち、昨年は通算500勝を達成。またレディースジョッキーシリーズでも総合優勝し、ナンバーワンの実力を誇っています。その素顔はというと、笑顔がチャーミングで穏やかな雰囲気の女性。数少ない女性騎手の日常を語っていただきました。 金子 もともと騎手になろうと思われた動機は、何だったんですか。宮下 小さいころ、おじいちゃんが家で馬を飼っていたので、世話をしたり、幼稚園のころにはもう乗っていました。それで自然に、馬と一緒にいられる職業をと思って。兄が名古屋競馬場で騎手をやっていたので、同じ先生の厩舎に入れていただいたんです。それから栃木県那須にある騎手養成センターに入って…。 金子 そこではどんなことを勉強するんですか。 宮下 2年間のうち、半年くらいが基本馬術、それから競走馬の訓練を行い、2年目に6ヵ月間、自分の所属する競馬場での実習後、学校に帰って試験を受けます。受かったら、騎手免許証をもらって騎手として乗れるようになるんですね。 金子 同期に女性の方はいらっしゃいましたか。 宮下 いないです。でも男性に負けたくないから、いつも「一番に!」と思っていました。 金子 初勝利のときは、どんなお気持ちでした? 宮下 メチャクチャうれしかったですねー。先輩たちが「行け!」とか、声を掛けてくれて。 金子 声は聞こえるんですか。 宮下 最初のころは、乗っているだけで精一杯だったんですけど、今は聞こえます。皆すごい声出してますよ。「どけっ!」とか。 金子 えっ。一緒に走っている人に? 宮下 はい。自分でも言っています。「おいっ!」とか、「危ないっ!」とか(笑)。声出すとお互い事故とか妨害とかしないんで、それも大事なんですね。 金子 落馬したことはありますか。 宮下 何回も落ちています。骨も折っています。走っているときはスピードが60キロくらい出ているので、地面に落ちるとすごい衝撃なんです。真ん中くらいを走ってたときに落ちて、後ろから来た馬と当たって、骨盤を外したこともあります。 金子 ほう。それでも乗るというのは、やっぱり大したものですね。 宮下 恐怖感は残っていないですね。 金子 日本全国で女性騎手の方は今、何人いらっしゃるんですか。 宮下 13人(うち2人はJRA、2人はばんえい所属)です。騎手になっても、やめてしまう方が多いので。 金子 女性ということで、違いはありますか。 宮下 最後に追い込みで負けたりすると、「女は追えないから負けた」と言われたりするんですよ。迫力がないとか、押す力がないとか。そう言われると悔しいですけど、結果を出さないと、認めてもらえないので。 金子 女性ならではということも、あるんでしょうね。 宮下 女性は手綱の当たりが柔らかいと言われます。男性は馬が行きたいときに、力任せに引っ張ったりするんですけど、反抗して嫌がる馬もいるんですよ。 金子 競馬のない日は、どういうお仕事をなさっているんですか。 宮下 深夜1時半ぐらいに起きて、2時から8時半ぐらいまで、22、23頭の馬を調教しています。競馬がない日はそこからは自由です。でも今は名古屋競馬が終わるとすぐ笠松競馬があるので、毎日、競馬がある感じですね。 金子 馬はそれぞれ性格が違うんでしょうね。 宮下 全然違います。難しい馬もいれば、賢い馬、全然言うことを聞かない馬も。先頭でないと走らない馬とか、後ろからでないとダメな馬とか。日によって調子も違いますし。だから朝早くから調教して、その馬にレースで出走して勝ったときは、言い表せないくらいの感激があります。「人馬一体」という言葉がありますが、そうなったときに勝てるのかなと思いますね。 金子 競馬の服は、勝負服と言うそうですね。色が胴紫、桃一文字、袖白ですか。いつもこの勝負服で? 宮下 はい。馬に乗っているとヘルメットで顔が見えないので、地方競馬では服でだれかがすぐ分かるようにしているんです。 金子 ご主人も騎手でいらっしゃるそうですね。ご夫婦で同時一着になられたこともあるそうで。よく同じレースにお出になるんですか。 宮下 1日に1、2回は一緒のレースに出ていますよ。ライバルです。 金子 成績はどちらがいいんですか。 宮下 私のほうがいいですね(笑)。 金子 タクシーにお乗りになることはありますか? 宮下 笠松競馬場に行くときは、毎回タクシーが来ます。名鉄さんじゃなかったかな。ジャンボタクシーとか。 金子 ありがとうざいます。それは決まりになっているんですか。 宮下 そうです。外部と接触できないように。 金子 やはり厳しいですね。車中では、どんなことをなさってます? 宮下 皆、すぐ寝ちゃいますね。 金子 深夜から起きていらっしゃれば、そうでしょうね。タクシーで印象に残るご経験はありますか。 宮下 女性だけのレースのときに、いろんな競馬場に行くと、タクシーの運転手さんに親切にしていただいています。おいしいお店を教えてもらったり、買い物する間、待っててもらったり。 金子 騎手のお話しはされないんですか。 宮下 しますよ。「仕事何ですか」って言われて、「騎手です」と言うと、競馬のことをいろいろ聞かれて。「今度競馬に行きます」と言われると、うれしいですね。 金子 「騎手です」と言うと、ビックリされるでしょうね。 宮下 ビックリしてますねー(笑)。 金子 こうしてお話を伺っていると、とても穏やかな雰囲気でいらっしゃるんですが、レースになると人が変わるんですか。宮下 すごく変わると言われます。勝負服を着ると、気持ちが引き締まるんですね。「行くぞ!」って感じで。 金子 ちょっと想像がつかないですね。これからの目標はありますか。 宮下 ケガだけはしないようにと。この先、いつまでできるか分からないですけど、乗っているうちは、一勝一勝積み上げていきたいと思います。 金子 年齢制限はないんでしょう? 宮下 ないですけど、体力が(笑)。自分ではここまで乗れるとは思ってなかったし、こんなにいっぱい勝てるとも思ってなかったんです。でも騎手をやめても、馬関係の仕事に就きたいとは思っています。 金子 ぜひ頑張ってください。今日は貴重なお話をありがとうございました。 [みやした・ひとみ] 1977年5月31日生まれ、鹿児島市出身。95年9月に免許取得、同年の10月22日に初騎乗。2日後の名古屋競馬場で行われたレースで初勝利。通算 523勝(2008年2月28日現在)で、女性騎手最多勝利数を更新中。得意な騎乗法は「先行」。 HOME>INTERVIEW私のタクシー体験TOP |
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