この記事は1998年9月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

大島 弘社長の名タク招待席

無線が走る、情報が走る。

今回は名タクの無線、それも業務以外の役割についてお話しましょう。

 中川区西日置にある名鉄交通ビル3階。ここには名鉄交通本社の他、「無線配車センター」があります。27台の電話の片側には無線局が5チャンネル。名タクをはじめグループ会社のタクシー約1200台全部を動かす無線基地で、いわば名タクのコックピットにあたります。

 お客さまからのご注文により早く、正確に配車する。これがもちろん無線基地の第一義ですが、他にも活躍ステージはあります。もっとも報酬はないので、ボランティアの一環ということになりますが――。

ルルル……電話が鳴りました。といってもお客さま用の電話ではありません。県警本部無線司令室からの直通電話です。

 「傷害事件発生、犯人は栄から東方面に黒い車で逃走。人相は……」。指名手配犯の追跡依頼です。無線基地から全タクシーに一斉に無線を流します。 約5分後、「それらしい人物を発見」と流し走行中のタクシーから無線が入りました。さっそく県警本部に通報。パトカーの出動により、間もなく犯人逮捕の知らせが――。

 ひき逃げ、強盗、傷害……。24時間、市内をくまなく走る「名タク」は、「走るナマの情報源」でもあります。乗務員が火事を発見して基地に通報し、大事に至らなかったケースもあります。

 また昨年秋には、地震や津波などの災害時に、情報源として協力する旨の契約を、名古屋市と交わしました。

不特定多数の人々と交信することができる無線。携帯電話ではなく、インターネットでもなく、無線の魅力にとりつかれた名タク乗務員はたくさんいます。アマチュア無線の国家資格を持つ人も少なくありません。そんな人々がプライベートに集まったのが、「名タク共済会アマ無線クラブ」です。

 結成したのは約23年前。すでに国家資格のあった村手光彦社長(現会長)が陣頭指揮を取り、自ら「ハロー、CQCQ……」とマイクを握って、クラブ員や未知の人々と交流を深めました。

 現在のクラブ員は約40人。「JR2YUU」がクラブのコールサインです。

無線配車センターが緊急、災害時に情報協力しているように、無線クラブ員も災害時には、ボランティア活動を行います。通信機能がマヒしたとき、無線を使って情報を流すわけです。幸いというべきか、これまでそういう事態に遭遇したことはありませんが、愛知県の行う防災訓練には過去数回、参加してきました。

 無線によって、社会の役に立ちたい。その気持ちは、会社も乗務員個人も同じなのです。