この記事は1999年9月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

 

とらばーゆ人

雅楽でお客さまとふれあい

  古橋宗春さん(北部営業基地)

 

 最近、名タクの車内(助手席のヘッドレスト)に大きなネームプレートが掛かっているにお気づきですか。乗車されたお客さまから「珍しいわね」と決まって声をかけられるのが、営業係(乗務員)歴3年の古橋宗春さん(51)。名前が尾張7代藩主と同じこともありますが、お客さまの興味を引くのは、名前の下の「趣味・・雅楽(龍笛)」です。

 9才で横笛を手にし、高校で縦笛、22才から本格的に龍笛を習い初めて、講師の資格を取得。現在は名古屋雅楽会に所属し、年数会の演奏会に出演するほか、地元のサークルと日蓮宗のお坊さんに、月2回づつ教えているそうです。

 本当は笛で身を立てるのが理想ですが、洋楽の演奏家でさえ難しい今の時代、邦楽で身を立てるのは無理とあきらめました。以前は文房具メーカーにつとめていましたが、この不況で退職を余儀なくされ、「気楽そうなイメージに引かれて」名タクに転職したのだそうです。

 「実際に仕事をしてみると、タクシーも龍笛もとてもよく似てるんですよ」

 龍笛には楽譜で表現できない微妙な節回しが多く、その習得度合で技術の優劣が決まるのだとか。自分があの人のレベルに達したい、この人のレベルに達したいと思えば、その人の演奏を耳で聞いて盗むしかないのだそうです。つまり誰を目標にするかで、自分のレベルが決まるのです。

 「タクシーも同じでしょう。目標をどこに置くかによって、成績がかわってきます。要は自分との戦い。そのやりがいが気に入っています」と古橋さん。

 その古橋さんがもう一つ気に入ってるのが、自分の仕事さえきちんとすれば、休みが自由に取れること。それで演奏会にも参加できるというわけです。「打ち込んでいる趣味がある人には、とてもいい職場です」

 勤務が終わると、営業基地の駐車場で2時間ほど練習。「ここなら人に迷惑をかけず、思い切り笛が吹けるのもうれしいですね」

 11月9日には、タクシーに乗り合わせたお客さまから依頼を受けて、仲間たちと名古屋能楽堂で演奏会を行う予定もが行っています。「雅楽に興味がおありでしたら、ぜひ声をかけてください」という古橋さんでした。