この記事は1999年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

 

とらばーゆ人

「タクシーも料理も基本は同じ」と元料理長

  伊藤 優さん(南部第二営業基地)

 

 「ドラゴンズが優勝を決めた時は、お客さまとの会話が弾んで、楽しかったですね」

 野球の話になると目が輝いてくる伊藤優さん(42)は、名タクの営業係(乗務員)歴1年という元料理人。オリエンタル中村(現在の名古屋三越百貨店)に入社し、食品部で食材を扱ったり、店内のレストランを訪れているうち、料理人への憧れがムクムク・・・。

 実は子供の頃から興味があって、「目玉焼きのような簡単なものですが、この子は料理がうまいと、褒められたことがあるんです。それが潜在意識の中にあったのでしょうか(笑)」。

 結局、百貨店を1年半で退職し、以来17年間。名古屋や大阪の一流ホテルで修業。最終的には関西空港近くにオープンするホテルの総料理長に誘われて、洋食部門の料理長まで出世します。

 「料理人の夢は、いつか自分の店を持つこと。ご贔屓(ひいき)さんの勧めもあって、私も平成5年に念願の店を持ちました」

 素材にこだわった焼き鳥屋さんです。しかし残念ながら4年で閉店。時代が悪かったといえばそれまでですが、伊藤さんは人の使い方、経費のかけ方など、たくさんのことを勉強したといいます。

 とりわけ「お客さまとの会話の中から、このお客さまは今、何を望んでいるか、推し量ることの大切さを学びました。タクシーでも、陽気に話したいときや、静かにくつろぎたい時があるでしょう。接客で重要なのは、それを敏感にキャッチすることなんですね」。

 そして「今朝も営業係の会議で、タクシーの三原則は、安全・快適・迅速という話が出たんですが、安全は料理でいえば味わい、快適は店の雰囲気、迅速はお客さまを待たせないということ。業種は違っても基本は同じなんだとつくづく思いました」。

 その伊藤さんの夢は、もう一度自分の店を持つことですが、「タクシーは努力した分、成果が上がりますし、思い通りに仕事がうまくいった日は心地よい達成感もあり、今はこの仕事が気に入っています」とも。いろいろなお客さまと話ができるのが、何よりも楽しいのだそうです。