この記事は2000年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

私のタクシー体験  
物まねタレント
コロッケさん

聞き手
名鉄交通社長 大島 弘

コロッケ

本名・滝川広志。1960(昭和35)年3月13日生まれ、熊本県出身。中学時代から物真似に目覚め、熊本第一工業高校卒業後、80年「お笑いスター誕生」で銀賞を受賞してデビュー。千昌夫、美川憲一、五木ひろしなどレパートリーは約100人にのぼる。

ちあきなおみさんの顔と声色こわいろ)で乗ったら、運転手さんは・・・・。

 とにかく笑える。いかにもらしい。そんな物真似(ものまね)で独自の境地をひらいたタレント・コロッケさん。テレビの他、舞台での活躍も多く、1月(2〜28日)には中日劇場新春特別公演で座長公演を予定している。名古屋の21世紀を初笑いで迎えられそうだ。タクシー体験も、さすが笑える話がたっぷりと。

タクシーに乗って気づかれないときは、ちょっといたずらを。

 大島 いつもテレビで拝見して、楽しませていただいています。お仕事がら、タクシーをご利用になることもおおいでしょうね。

 コロッケ そうなんですよ。公演で地方に行ったときとか、飲みに行った帰りとか。自転車で行くこともありますけどね。(笑い)

 大島 お乗りになると、運転手に何か言われませんか。

 コロッケ 帽子を被ったりしますから、僕だと気づかれないことが結構、多いですね。で、公演が終わって乗ると、運転手さんが「今日(のステージ)はコロッケだったんだよ、知ってる?」。僕も声変えて「ああ、面白いらしいね。でも変わった人ですよね」とか言うと、「そこがいいんじゃない?」と。(笑い)

 大島 ほお。

 コロッケ 最後に「じゃあ、また見に言ってあげてくださいね」って言って、帽子取って「よろしくお願いします」と言うと、振り向いて「おーっ!」。それは2、3回ありましたね。

 大島 そりゃあびっくりするでしょうね、運転手は。

 コロッケ 粋な運転手さんに出会ったこともありますよ。北海道の稚内のゆきまつりで、吹きさらしの氷のステージだったんです。気温がマイナス26度くらいで、顔がこわばっちゃって、ちあきなおみさんの顔で出たまま、元に戻らないんですよ(笑い。)で、その顔のままタクシーに乗って、「○○ホテルまで行ってください」って言ったら、運転手さんがパッと振り向いて、(ちあきなおみの顔になって)「はい、分かりました」と。(爆笑)

 大島 できのいい運転手だったんですね。うちの乗務員もそういう訓練をしなきゃいけませんね。(笑い)

一人一人のお客さまを大切にする姿勢はすごいですね。

 コロッケ 名古屋だと、いつも名タクさんを利用させてもらっています。運転手さんの人当たりが一番よくて、安心して乗れるんですね。すぐそこまででも「はい」って、気持ちよく言ってくださる。ついこの前もマネージャーと話してたんですけど、一人のお客さまを大切にする、近い距離のお客さまも大切に扱う。そういう姿勢をみなさん持ってらっしゃるのは、すごいなと。

 大島 ありがとうございます。

 コロッケ 僕らも同じなんですよね、サービス業ですから。お客さまが大勢か少ないかは関係ない。来ていただいている方に、どれだけ楽しんでもらえるかですからね。「見に来てよかったな、また見たいな」と思っていただけるかどうか。名タクさんですと、「今度も名タクに乗ろう」と素直に思うんですよ。そういうところで、僕らもすごく勉強になります。

 大島 お褒めいただいて、涙が出そうです(笑い)。わが社では、お客さまを大切にする。もう一つは従業員を大切にする。これを社是にしていまして、お客さまを大切にしなきゃ、自分たちの生活もあり得ないと考えてるんですよね。

 コロッケ すばらしいですね。それが運転手さんのあったかさに伝わっているような気がします。僕らも、お客さまに対する感謝の気持ちを、いつも忘れないでいようと心掛けていきます。

食卓のコロッケのような存在でいたい。

 大島 ところで、コロッケというお名前は、どこからついたんですか。

 コロッケ 顔がコロコロ変わるので、コロッケと。ええ。

 大島 ご自分で付けられたんですか。

 コロッケ いえ。昔、ショーパブみたいなところで働いていたときに付けられまして、そのまま芸名に。コロッケは皆さんの食卓に、1ヶ月に1回くらいはおじゃまする食べ物かな、そういう存在でいたいなと思いまして。

 大島 僕は物真似は門外漢で全然分かりませんけど、表面だけじゃなく、内側から真似される奥の深さにいつも感心してましてね。崩しながらプラスしながら、一層その人らしいキャラクターをかもし出していると。

 コロッケ ありがとうございます。

 大島 特に島倉千代子さんとか美川憲一さん、淡谷のり子さんが好きなんです。年寄りですからね(笑い)・真似するコツというのは、あるんですか。

 コロッケ 僕は自分が興味を持った瞬間から、感性がその方に集中するんですよ。で、自分の中に半分以上、その方の形が入ったときから、「この方はこうなのかもしれない」「こういうこともやるんじゃないか」と、別の興味がわいてくるんですね。それがコロッケ流の味付けになっていると思うんです。

 大島 ほお。

 コロッケ 例えば吉幾三だったら、よく見るとブルドッグみたいなときがあるなと、自分のなかで勝手に思うんです。で、そういう顔を歌の途中で入れたり、「ウーッ」と犬っぽく言ったり。で、見ている方がそれを吉さんぽく見えたら、僕の感性と見る方の感性が一致して、笑いがくるんですよね。

 大島 なるほど。

いつも進化していたい。

 コロッケ 例えば淡谷先生の物真似でも、キックボードに乗って出てきたり、1年後にはまた出方を変えたり。ご本人を知らなくても笑えるという味付けをしつつ、自分もどんどん進化していって。そうでないと、飽きられてしまいますからね。

 大島 それが奥の深いところですね。同じ人の真似でも、いつも新鮮に楽しませてもらえるもんですから。コロッケさんが真似されたことで、逆にご本人の人気が出たりするところがすごいなと。

 コロッケ とんでもないです。僕らご本人がいないと、成り立たない職業ですからね。その方が大事にしてらっしゃるヒット曲を横取りして、ぐじゃぐじゃにして(笑い)、ふざけさせてもらっているので。そこは皆さんに、感謝の気持ちを忘れないようにと思っています。

 大島 中日劇場のお正月公演は、どういう内容になるんですか。

 コロッケ 今回は年代に関係なく楽しんでいただけるようなステージを心掛けて。お芝居「雪之丞七変化」は昔の喜劇の雰囲気を取り入れて、コロッケ流に笑いあり、人情もあり、それでいてちょっとマジメな場面もありという。2部はものまね大全集ということで、いろんな方のショーを一挙に見られると思ってください。体型と顔はがまんしていただいて。(笑い)

 大島 ぜひ頑張ってください。今日はお忙しいところ、楽しいお話をありがとうございました。