この記事は2001年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

私のタクシー体験

女優・歌手
増田恵子さん

聞き手
名鉄交通社長 大島 弘

ますだ・けいこ

 1957(昭和32)年9月2日生まれ、静岡市出身。76年、「スター誕生」で合格、ミーとコンビを組み、「ペッパー警部」でデビュー。「UFO」で日本レコード大賞受賞。81年に解散し、同年「すずめ」でソロ歌手に。2年後には舞台「かえる屋」に出演。

運転手さんが行きと違う道を走ったとき、怖くて鼻血がドバーッと。(笑い)
  ピンクレディーが解散して今年でちょうど20年。「ケイ」こと増田恵子さんは歌手として、また女優としても、活躍の幅を広げている。4月には名鉄ホール公演「浮き世長屋は春爛漫」で、色っぽい幽霊役を好演したばかり。そのタクシー体験は、幽霊こそ出ないものの恐怖に満ちて‥??

50歳になってもミニスカートで、「ペッパー警部」を歌いたい。

 大島 うちは家族揃って、ピンクレディーの大ファンだったもんですからね。昨年の紅白歌合戦は楽しませていただきました。ああいう場合、お話があってから当日まで、どんなことを‥‥。

 増田 紅白は解散してから2回出てるんですけど、それ以後も毎年のようにお話をいただいて、お断りしてたんですね。でも去年は「それだけ言っていただけるなら」と。20世紀にああいうお仕事をさせていただいて、皆さんにかわいがっていただいて、ありがとうという感謝の気持ちで出させていただこうと。

 大島 なるほど。

 増田 で、「どうせ出るのなら、出場者の中でピカ一に光ってないと意味ないわね」と、内容や衣装もしっかり相談して‥。

 大島 けいこはどのくらいなさったんですか。

 増田 私たちはそれぞれのディナーショーで、ピンクレディーメドレーをやっていますし、5年前にも2人で全国縦断コンサートをやりましたので、忘れてはいないんですよ。ですからリハーサルが5日間くらいかな。

 大島 昔からスリムでいらっしゃいますけど、体力なんかは心配なかったですか。

 増田 こう見えても私のほうが体力はあって。10年くらい前からクラシックバレエをやっているので、昔より体力はついたかなと。だから50歳になってもミニスカートはいて、「ペッパー警部」を歌えたらなと思ってるんですけどね。

小さいころから「都会=カラフルなタクシー=怖い」と。

 大島 国内外でタクシーにお乗りになる機会も多いと思いますけど、何か印象深いご経験はありますか。

 増田 私はたくさんあるんですよ。というのは、小学校のころに「ザ・ガードマン」というテレビドラマをやっていたんですね。毎週、事件があって、それを解決するという内容で。そのオープニングが、東京の街並にいろんな色のタクシーがダーッと映るんですよ。

 大島 ほお。

 増田 私の育った静岡はタクシーといったら白か紺しかなかったので、「何てカラフルなタクシーだろう」と。で、最後に「今夜もどこかで事件がおきている」というナレーションで終わるんですけど、子供心に「都会って怖いところだな」と思って。だから初めて東京に来て、色のついたタクシーを見たときに、怖くて。(笑い)

 大島 そうですか。

 増田 それからずっと、一人でタクシーに乗ったことがなかったんです。でもあるとき、必要があって乗ったとき、運転手さんの息遣いがすごく荒くて、ハアハアやってるんですね。どうも熱があるみたいで、台風みたいな嵐の日なのに、窓を開けてゼーゼー言ってるんですよ。で、「すみません、目がかすんで前がよく見えなくて」と言われて「こわっ!!」(笑い)。何とか無事に着いたんですけどね。

 大島 大変なご経験でしたね。

 増田 それから解散する間際にも乗ったことがあるんです。プロデューサーの家から帰るとき、タクシーを呼んでくださったんですね。それが都心から50分くらいのところだったんですけど、行きと違う知らない道を通るんですよ。「あれっ、どこに連れて行かれちゃうんだろう!」と思いながらドキドキしてたら、突然、鼻血がバーッと出てきて。(笑い)

 大島 ほお。

 増田 タクシーに乗ると、緊張する体質だったんですね。でも30歳過ぎてからは割と平気で。解散してからずっと、買い物のときとかはハイヤーを頼んでたんですけどね。あるとき運転手さんに「もったいないよ、買い物くらいならタクシーで行きなさい」って言われて、「分りました」って。(笑い)

サービスは世界一ですね。  

 大島 私どもでは、お乗りになったお客さまの不安をなくし、安心していただこうということで、自己紹介することを義務づけているんす。これは20数年前から始めまして、今では社風として、かなり定着しているんですね。

 増田 やっぱり最初にご自分の名前を言われると、安心しますよね。たまに東京でもありますけど。私はよく海外へも行くし、お友達にも外国の人が多いんですけどね。皆さんおっしゃるのは、「世界中に日本ほど親切なタクシーはないね」って。外国だとまず自動ドアはありえないし。大阪の方に行くとおしぼりが出てきたり、ドリンクなんかも積んであったりして。料金は世界中で一番高いかなとは思うんですけど、サービスは世界一だなと思いますよ。

出会えた瞬間を大事にしたい。

 大島 先日の名鉄ホールでのお芝居、拝見しました。久々の舞台だそうですが、いかがでしたか、感触は。

 増田 面白かったです、すごく。共演の方々が気を使ってくださって、あったかい感じで。皆ね、私を陥れようとするんですよ。左とん平さんなんか、何かイタズラしようとしてて、油断できないんですよ。関係ないことを小さい声でクチャクチャしゃべったり、眉毛を動かしたりね(笑い)。私は笑い出したら止まらないので。ああいうのは、お客さまからは見えないんですかね。

 大島 いや、気がつきませんでした。

 増田 私は毎日同じことをやるのが苦手で、舞台は好きじゃなかったんですね。でも今回はそんなこと言う前に、とん平さんのワナにはまらないように、緊張してたんですよ。

 大島 じゃあ毎日、新鮮なお気持ちで舞台ができたわけですね。今後は舞台の予定はありますか。

 増田 当分ないです。テレビドラマは入ってますけど。映画も、「親分はイエス様」(東映系)が9月に公開されます。奥田瑛二さんの情婦で、途中で死んじゃう役なんですけど。

 大島 なるほど。これからの抱負などはございますか。

 増田 皆さんに「結婚しないの?」と聞かれますけど、私は結婚しないと言っていませんので(笑い)。自分が生まれてきた意味を考えながら、一期一会という言葉があるように、出会えた瞬間を大事にしたいと思っています。

 大島 今日はお忙しいところ、ありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。