この記事は2002年3月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。
私のタクシー体験 |
俳優 芦屋 小雁さん 聞き手
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花嫁車があるのはすごいですね。さすが名古屋だなと。
喜劇俳優として、半世紀にわたり第一線でご活躍の芦屋小雁さん。名古屋での舞台も多く、今年1月には名鉄ホール「京唄子特別公演」で、観客を笑いの渦に誘った。絵画の個展を開くなど、趣味分野でのご活躍も知られるところ。それだけに、名タクドライバーの趣味の掲出にも、関心を寄せていただいた。 |
ヨメハンの運転よりも、タクシーは安心(笑)。 大島 いつも楽しくお芝居を拝見させていただいています。名古屋の舞台は結構、多いんだそうですね。 芦屋 ええ。僕は終戦直後からずっと名古屋に来ていますから、もう50年近くなるんですよ。ですから名タクさんは、しょっちゅう利用させていただいています。「名タクの○○です、よろしく」って皆さんキチッとご挨拶なさるし、「いいなあ」と思てね。 大島 そうですか。ありがとうございます。 芦屋 僕はね、車が好きなんですよね、すごく。タクシーはしゃべれるし、外が見られるし、ええなあと。自分が運転しないから、タクシーは安心して乗っていられるんです。ヨメハンが運転する車よりも。(笑) 大島 運転免許もお持ちでないんですか? 芦屋 そうなんです。それで名タクさんは運転手さんの名前と一緒に、趣味が書いてあるでしょ。「カラオケ」とか。あれは面白いなあと。そういうのが一つの話題になって、話しができるのでね。珍しいですね、趣味が書いてあるのは。 大島 関西では、あまり見かけませんか。 芦屋 ないですね。お名前は時々ありますけど。それに名タクさんのパンフレットを見せてもろたら、いろんな車があるんですね。車いすを乗せるの(ジャンボタクシー)とか、小型バスとか。さすが名古屋だなと思たのは、結婚式用のタクシー。 大島 花嫁車ですね。文金高島田でも乗りやすいように、ドアが上に開くようになっているんです。 芦屋 ほお。うまいこと考えますね。 大島 特殊な車としましては、後部の座席が外に回る車(ウェルキャブ)も、何台か用意しております。足や腰が弱い方でも、お乗りになりやすいようにと。 芦屋 それはいいですねえ。工夫はせなかんなあ。僕はいつも思うんですけど、一般の方も近距離でも乗られるといいんですよね。車がそこまで行ったら、また次の方が乗るかも分らないしね。 大島 おっしゃるとおりです。優秀な運転手は近距離のお客さまでも、次のお客さまを案内してもらうつもりで、ありがたくお乗せするんです。その心掛けが、お客さまとご縁を結ぶんでしょうね。 |
黒人ドライバーが連れて行ってくれたのは、スラム街。 大島 外国のタクシーで、何か印象深いご経験はございますか。 芦屋 これは怖いですねー。アメリカでもニューヨークやロサンゼルスは、いろんなお国の方がいらっしゃるので、いろいろなタクシーがあって。親切な方もいてはりますけどね。フロリダとか片田舎のほうですと、非常に柔和な運転手さんで、安心して乗っていられますね。 大島 そうですか。 芦屋 ニューヨーク行ったときは、(兄の)雁之助の娘さんがアメリカに住んでいましたので、一緒に回ってくれて。すごく面白い黒人の運転手さんがいらっしゃって、「こっちの方に回ってみましょう」と、スラム街を見せてもらいましたよ。自分が黒人だから、大丈夫だって。 大島 それは貴重なご経験をなさいましたね。 芦屋 でもやっぱり不安ですね、外国は。日本のタクシーは外国の方がお乗りになっても、安心じゃないのかな。でも京都で、「あの会社のは乗らないほうがいい」と言われたりすることもありますね。特に飛行場なんかは、普通のタクシーじゃなさそうなのもいるし。 |
マウイマラソンで42キロを完走しました。 大島 外国にいらっしゃるのは、お仕事で?
芦屋 仕事も、遊びもありますけどね。僕は元来、飛行機が好きじゃないんですよ。だから「どうしても」というときだけ。一昨年だっけ。マウイマラソンに行ってきましたよ。「走らへんか」という話があって、半分仕事で。
大島 ほお?
芦屋 ヨメハンと二人で42キロちょっと、完走しました。
大島 すごいですね。私もマラソンは嫌いじゃないですけど、ハーフが精いっぱいで。人によっては幻覚症状があるそうですね。
芦屋 本当にそういう感じですよ。30キロくらいを越すと、ワケ分らなくなって。辛いのを超してしまうんですね。でも朝5時ごろ出発して、着いたら4時ごろ。9時間くらいかかった(笑)。走ってたら誰もおらへんようになって、8時間過ぎたころには、ラインのコーンやアーチをもう片付けてはる(笑)。
大島 いい思い出になったでしょうねー。
芦屋 「もう行かへん!」言うてたけど、最近、また走りたいなと思てね。ハーフやったらいいね。
壁でもふすまでも、あいているとすぐ絵を描いてしまうんです。
大島 お仕事もご多忙だそうで、名古屋の舞台の合い間にも、大阪にお帰りになったり‥。
芦屋 はい。幕が下りてから大阪に帰って、夜中にテレビの仕事をして、また名古屋に、ということを週2日くらいは。ひどいときは朝5時ごろまで大阪で仕事して、6時半か7時ごろの電車で帰ってきました。名古屋に着くまでの2時間、やっと寝られるんです。
大島 超人的なスケジュールですね。お若いんですねー。
芦屋 いやいや、ヨメハンが若いだけで(笑)。僕は趣味が多いんですよ。その分、若さを保てるようなものがあるんじゃないですか。
大島 コレクションもなさってるとか。
芦屋 そうなんです。映画が好きでね。映写機は全部で30台くらいあるのかな。大正とか昭和初期のも。あとは映画館専用のフィルムを集めたりね。
大島 どういうところで、手に入れられるんですか。
芦屋 映写機は古道具屋さんとか、いろんなところで探すんです。名古屋の大須でも、よお買うんですよ。顔出しては「ないか」って。
大島 ほお。絵もお描きになってらっしゃるんですね。
芦屋 水彩と油絵を描いて、たまに個展を開いたりさせてもろてます。家の中もね、あいてるところがあると、すぐ絵を描いてしまうんですよ。壁だろうが、ふすまだろうが(笑)。のれんの絵も描いて、着物屋さんみたいなところが販売してくれはるから、そっちの商売もいけるかなと思いながら、ちっとも売れへん。(笑)
大島 才能がいろいろおありになって、うらやましい限りです。今日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。