この記事は2002年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

バックミラー
タクシー無線は強力な捜査網

成田 道彦(無線配車センター)

 配車センターで仕事をしている。お客さまから電話でご用命をいただく。そこで無線を通して、指定の場所へタクシーを伺わせるのである。無線はグループ1317台と通じている。最寄の空車がすぐに応答してくれるから、お客さまを待たせることもない。

 1日に1人当たりざっと500件の電話をさばく。それこそ息をつく暇もないが、指定場所や時間を間違えたら、大変な迷惑をかける。つねに臨戦体制の職場なのである。

 ところで、この迅速かつ大掛かりな無線網には、こうした本業?のほかに、特別な役どころもある。

 あまり知られていないことだが、実は当センターは愛知県警とホットラインでつながっている。事件が発生した際、タクシーの目撃情報が解決の糸口になることも多いからだ。

 なにしろ当グループだけでも1317台の「目」が市内中に光っている。瞬時にして大規模な捜査網が、至るところに張り巡らされることになる。

 ホットラインでの手配は年間でおよそ300件ほどある。内容はさまざまだが、中には当の名タクに犯人らしき人物が乗り込んだという話もある。こういうケースは話が早い。すぐさま無線手配して、該当車両とパトカーと合流させ、真偽のほどを確かめることができる

 連絡を待つだけではなく、こちらからホットラインを積極的に利用もする。最近では営業係(ドライバー)が不審火を発見し、迅速な通報のおかげで被害を最小限で食い止めることもできた。

 劇的な犯人逮捕に結びつくことだって、もちろんある。

 今年2月10日のことだ。午後5時20分ころに強盗事件が発生したと、県警から連絡が入った。逃走した車のナンバーを全車に伝えたところ、わずか10分後にグループの愛電交通(電タク)の営業係から熱田区日比野のローソンで該当車両を発見の報が入ったのである。すぐに110番に連絡し、おかげで犯人はめでたく御用となった。

 検挙に協力したというので、発見者の営業係ともども県警から感謝状をいただいた。

 感謝状も嬉しいが、仕事を通じて安全な社会に貢献できたことの方がうれしい。使命感がいやおうもなく高まってくる。本業の電話対応にも、ますます身が入るというものである。