この記事は2002年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

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 今年十月、名タクの営業係(乗務員)になったばかりの大矢祥一朗さん(43)。その職歴はずいぶんと変化に富んでいる。

 皮切りは自衛隊員。北海道の稚内基地に勤務していた頃、隊の機関紙に載っていた“お寺の職員募集”を見、興味を引かれて、まず愛知のお寺にトラバーユする。その後、人材派遣会社に籍をおき、事務関係の仕事をした後、名タクへ。

 「どの職場でも前の仕事の経験を生かしながら、キャリアアップを心がけて、自分なりに全力投球してきたつもりです」

 その中でも、強く影響を受けたのがお寺。仕事は主に総務的なもので、自衛隊では経験できなかった事務的なことやパソコンも覚えた。しかし、それ以上に心を引かれたのが、仏教の教えだったという。

 当時、お寺では各地に僧侶が出向いて、悩み事の相談会を開いていた。宗教関係の相談会というと、警戒する向きもあるかもしれないが、大矢さんによると、この相談会は説法を中心とした真摯なもの。仏の教えを通して、人々に希望や勇気を与えていくものだという。

 その相談会にアシスタントとしてついて行くのも、大矢さんの仕事の一つ。「受付をしながら話を聞いていると、いつも人を責める前に自分に反省するところはないかとか、心のもち方を変えてみたらどうかとか、悩んでいる人の視野を広げるような、いい話ばかり。私の心にも染みてきました」。

 仏教にふれ、物腰も話し方も穏やかになった気がするという大矢さん。ここでの経験は大変貴重だったよう。しかし、勤めて五年ほど後、サリン事件など宗教法人が関係する事件が続き、相談会は下火に。それを機に退職した。

 名タクへは、「自衛隊時代に大型免許を取得していましたので、それが生かせると思って」。でも実際に入って真っ先に感じたのは、お客様から寄せられる信頼の大きさ。「名タクしか乗らないというお客様も多いんですね」。

 そして規模が大きいばかりでなく、人材も豊富。中川基地にも新人に優しい心遣いをしてくれる上司が大勢いるのが、心強いという。

 目下の目標は、「人を感動させられる接遇」と、日々の乗務に意欲を燃やしている。



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