この記事は2004年12月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。

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聞き手(名鉄交通社長)
金子暁男

 「彼が画面の中にいると、ある種の落ち着きが出る」と、山田洋次監督が絶賛する俳優の神戸浩さん。山田作品への出演は公開中の映画「隠し剣 鬼の爪」で9作目。中間(ちゅうげん)の直太役を好演していらっしゃいます。柔和そうなキャラクターに似合わず、タクシーではけんかしたこともあるとかで・・。


金子 「隠し剣 鬼の爪」、拝見しました。作品もよかったのですが、映画館で見る映画ってすばらしいですね。久しぶりだったので感動しました。
神戸 うれしいです。今はすぐビデオになるというので、映画館に行かない人が増えてきたんですけどね。やっぱりテレビで見るのとは違いますね。
金子 ええ、全然違いましたね。
神戸 色がね、フィルムとビデオは違うんですよ。苦労して撮った空の色とか海の色とか、やっぱりスクリーンで見てほしいと。伝わってくるものが違うと思うんですよね。
金子 そうですよね。撮影中の裏話などはありますか。
神戸 僕がニワトリを追いかけるシーンがありましたね。ちょうど浅田農産の近くにオープンセットが建ってまして、水道もないんですよ。そこで小道具さんの持ってきたニワトリと、奮闘してたんです。
金子 ほう。
神戸 で、ホテルに帰ってテレビのニュースを見ると、「浅田農産が鶏インフルエンザで」って(笑)。昼に「はい、弁当」と言われても、手を洗うところがなくてね。どうしようかと。何もなくてよかったです。(笑)
金子 時代劇は現代劇と、随分違いますか。
神戸 そうですね。(カツラの)月代(さかやき)をつけるのに、まず羽二重をつけるんです。それが嫌で嫌でね。でも今回は監督が、「羽二重をするのはウソだ」と。頭を剃って、月代は地毛でやりました。だからちょこっと好きになりましたね。

金子 お生まれも名古屋ですか。
神戸 はい、守山で生まれました。今は瑞穂区にいるんですけど、東京に行こうかとすごく悩んだんですよ。けど僕は名古屋が好きなので、東京は通勤圏かなと。ギャラより交通費が高くなって、ちょっとつらいときもあるけど。(笑)
金子 もともとこのお仕事にお入りになったきっかけは何ですか。
神戸 親は「大学出て企業に行きなさい」と言ったんですけど、大学落ちちゃったもんですから。ちょうど(劇作家の)北村想さんの劇団が応募してたので、「入れてください」と。そこは「彗星、’86」といって、ハレー彗星が1986年に来るまで4年間頑張ろうという劇団で。僕は「大学も4年間か。(同じなら)芝居をやろうかな」と。
金子 大学の代わりにですか?
神戸 うん。そんなことをしてたら、北村想さんが岸田戯曲賞をとったりして、劇団も東京の仕事が増えてきて、徐々に名前が売れるようになったんです。

金子 今まで映画にたくさん出てらっしゃいますけど、思い出深い作品は何ですか。
神戸 僕は映画で賞を2回いただいたんですよ。竹中直人さんが初監督をした「無能の人」(91年)で、報知新聞助演男優賞をいただいて、山田洋次監督の「学校」(96年)で、日本アカデミー賞の助演男優賞を。それはうれしかったですけどね。
金子 そうでしょうね。
神戸 僕は渥美清さんと3本やっているんですよ。「男はつらいよ」の46、47、48作目。そのとき、役者になってよかったなと。
金子 渥美さんというのは、「寅さん」の通りのキャラクターですか。
神戸 全然違うと思いますよ。人生のこととか、いろいろ教えていただいて。僕は山田監督と渥美清さんに出会わなかったら、役者をやめてたんじゃないかなというくらい。
金子 なるほど。だいたい脇役が多いですよね。脇といっても、なくてはならないような存在の。
神戸 そうですね。脇役を演じるのは面白いですね。もっと遊べるんじゃないかなとか、好き勝手にできるから。

金子 普段はご自分で運転なさるんですか。
神戸 はい。車が好きだもんですから、昔は東京まで車で行っていました。ただ11月から(運転中の)携帯がだめになったから、タクシーのほうがいいのかなと。忙しいときは、電話がよくあるから。
金子 そうですね。携帯は事故の危険もありますからね。
神戸 車買って、保険や税金払うより、タクシーに乗ったほうが安いですね。名古屋NHK制作の番組のロケバスは、名タクさんの車で、楽してます。ハイエースでしたっけ?
金子 そうです。ロケの雰囲気を分かっている運転手のほうがやりやすいということで、ディレクターさんからご指名いただくこともあります。ありがたいことです。

金子 タクシーでお困りになったことはございませんか。
神戸 僕は多いんですよ。昔はやんちゃだったから、酔っ払ってケンカになることもあったんですね。名前の通ってない会社のタクシーで。だから今はブランドのタクシーしか乗らないことにしてます。安いタクシーは、安いだけだから。駅の待合でも、「名タクが来るまで待ちます」って。
金子 ありがとうございます。他の都市でも、タクシーにお乗りになる機会は多いんでしょうね。
神戸 そうですね。地方に行くときは、きれいなタクシーに乗りますね。僕はタバコくさいタクシーは、気持ち悪くなるんです。
金子 タクシーで何か楽しいご経験はありますか。
神戸 ラジオの番組にときたま出て、映画とか芝居の話をするんですね。で、声に特徴があるもんだから、運転手さんは覚えててくれて、「出てたでしょ」とか。うれしいですね。ワンメーターでも「千円取っといてください」って。

金子 今後のご予定は決まっていますか。
神戸 1月に名古屋の千種文化小劇場で、北村想さん作・演出の「あの山」という舞台をやります。芝居が好きな仲間と毎月いくらか貯金して、年1回舞台をやろうということで。
金子 いいですね。この先、おやりになりたい役はございますか。
神戸 僕はね、乗馬とピストルが好きなんですよ。だから夢は映画で、馬に乗りながらピストルを撃つシーンをやることなんです。
金子 西部劇の世界ですね(笑)。今後のご活躍を楽しみにしています。


かんべ・ひろし
1963年5月28日生まれ。劇団「彗星’86」(のち「プロジェクト・ナビ」)を経て86年、舞台「ビリィ・ザ・ギッドの新しい夜明け」で本格デビュー。「男はつらいよ」「学校」「たそがれ清兵衛」などの映画の他、舞台、ビデオ、テレビで活躍中。1月20日(木)〜23日(日)に名古屋市千種文化小劇場で公演される「あの山」の問合せはTEL080・3627・3833まで。

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