この記事は2008年6月のものです。現在の内容と異なる場合がありますのでご了承ください。
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聞き手(名鉄交通社長)
金子暁男 |
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低音が魅力の人気バイリンガルDJ、クリス・グレンさん。現在はRADIO―i(79・5FM)で、「PM―i」(月―木・午後1―3時)を担当するほか、多方面で活躍中です。趣味も多彩で、手作りの甲冑で侍行列に参加したり、ヘリコプターでメルボルンから名古屋まで飛んだりと、どれも「オタク」を自認するほどの本格派。話題は尽きませんでした。 金子 最初は交換留学生として、日本にいらっしゃったそうですね。留学生になるきっかけは、何だったんですか。クリス 9歳くらいのときに「面白い人生を過ごしたい」と思って、交換留学生になれば、他の国が体験できると。日本はオーストラリアと全く違うんですね。言葉も食べ物も文化も。だからいいチャレンジと思っていた。 金子 そのときは東京へ? クリス いえ、札幌です。そこで1年間勉強して、日本のオタクになりました(笑)。だからオーストラリアに帰って、逆ホームシックになりました。それで92年に日本に戻って、1年間、東京のラジオ局でDJをやってから、名古屋に新しいラジオ局がスタートしたので来ました。 金子 名古屋にというのは、何か理由がおありだったんですか。 クリス 交換留学生に選ばれたとき、先輩たちは東海地方に来ていたので、僕もこの地域の勉強をして、楽しみにしていました。でも札幌になりましたが、ホストファミリーの人の友達が、名古屋の英傑行列に家康として参加しました。で、僕はパンフレットを見て、「名古屋、いいなー」と。お城のある街、侍のいる街、歴史が残っている街。いつか行きたいと。 金子 なるほど。 クリス 名古屋に来て、もう15年です。本当に名古屋が好きです。名古屋はなごやか。(笑) 金子 名古屋も最近は随分変わりましたね。 クリス 僕が来てから、ナゴヤドーム、ツインタワー、ナディアパーク、ミッドランドスクエア…だいぶ出来ました。すごい元気になってよかったです。 金子 オーストラリアと日本のタクシーは、違いがありますか。 クリス だいぶ違いますね。まず数。日本は多いです。それから日本は後ろのドアが自動で開く。オーストラリアは自分で開けないといけない。値段は、日本のタクシーはリーズナブルだと思います。 金子 そうですか。 クリス ドライバーさんのマナーも違います。オーストラリアは時々、ラフな人がいる。日本ではちゃんとスーツを着て。好きなのは、ドライバーさんといろいろ話すこと。僕にとっていい刺激です。新しいアイデアとか、番組のネタになったり。日本の文化とか歴史を学ぶこともあるし。フレンドリーな方が多いので、いいなと思っています。 金子 タクシーで、何か印象に残るご経験はありますか。 クリス 数年前に東京に行ったとき、タクシーで皇居の周りをドライブしました。で、石垣やお堀を見て、「昔の江戸城は本当に素晴らしいね」と、一緒に乗っていたディレクターさんに言いました。彼は「江戸城? 違うよ、皇居だよ」。僕は、「明治時代になって、江戸城に明治天皇が入って、それが皇居になりました」と言うと、「違うよ!」。「じゃあ、江戸城はどこですか?」「知らない」(笑)。ドライバーさんが「外国人の人、正しいよ。これが江戸城だよ」と言いました。で、「そうなの!?」と。ドライバーさんはやっぱりいろんなことを知っています。 金子 甲冑のご趣味がおありだそうですね。 クリス 甲冑のオタクです(笑)。名古屋に来てから、甲冑の先生の弟子になって、甲冑を作ったり、鎧の勉強を始めて。日本の鎧は、ヨーロッパの鎧と比べて、素晴らしいです。着やすい、動きやすい。本当に自分の体を守るという感じで。作品としても素晴らしい。細かい部品が全部手作り。その作りとか、形とか、使い方とか、全部魅力あります。 金子 鎧は時代によって、形が変わりますね。 クリス そうですね。戦法が変わって、鎧も同時に変わりました。平安時代はデカい、重い。室町くらいから段々、人間の形の鎧になってきた。僕は戦国時代が好きです。侍の文化とか、剣術とか、鎧の作り方が一番ピーク。1500年から1600年くらいの間ですね。 金子 その時代は実用品だったんでしょうね。 クリス そうです。江戸時代になると鎧の作り方とか、甲冑師の知識も、段々落ちたんです。 金子 さすがに日本人よりもよくご存じで(笑)。甲冑はいくつかお持ちなんですか。 クリス 3領を展示しています。あと兜とか武具も結構あるし。作ったのは1領だけで、他は古い鎧を集めました。 金子 いろいろなイベントで、侍行列をなさっているそうですね。 クリス 年に少なくても4〜5回は鎧を着て、行列します。オーストラリアでは、サムライフェスティバルをやりました。「サムライ」は世界中の人が知っている言葉で、特に愛知県は侍の地元です。そのイメージをもっとプロモートするといいですね。 金子 そうでしょうね。 クリス 僕は剣道も好きだし、日本刀も世界で一番素晴らしい刀と思う。日本人はもっと日本の文化に誇りを持たないと、もったいないです。 金子 ヘリコプターのご趣味もおありだそうですね。メルボルンから名古屋までフライトされたとか。 クリス はい、2005年に。日豪友好の懸け橋としてヘリで飛べば、近いイメージがあるかなと。 金子 何カ所かで給油なさったんでしょう。 クリス そうです。メルボルンから名古屋まで1万2000キロ。ヘリは1フライトで600キロしか飛べないから、43カ所で給油しました。ニューギニア、インドネシア、フィリピン、台湾、日本の南の島…約1カ月かけました。不時着が2回。 金子 ほう。 クリス ニューギニアを飛んでいるとき、嵐と強風に遭いました。そこは濃いジャングルと海しかなくて、少しだけ砂浜があったので着陸しました。そのときはもう燃料がなくて、次の町に無線で連絡したら、「もう夜だから、朝まで頑張って」と言われて、キャンプファイアーを。そしたら海面が上がってきて、僕たちはマングローブの上に登って、コアラみたいに1泊しました(笑)。次の朝、やっとレスキュー隊が燃料とかサンドイッチとか持ってきてくれて。それもアドベンチャーのひとつでした。 金子 そうですね。次のフライトプランはおありですか。 クリス まだ具体的には決めていませんが、夢としてのプランはたくさんありますよ。 金子 そうですか。今後のご活躍を楽しみにしています。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。 [くりす・ぐれん] 1968年生まれ、オーストラリア・アデレード市出身。17歳で日本留学。18歳からオーストラリアのラジオ局でラジオDJを務めた後、再来日。93年〜04年までZIP―FM、その後はRADIO―iに。テレビ、ラジオ、CMナレーションなどでも幅広く活躍中。剣道初段。日本甲冑武具研究保存会会員、全国自家用ヘリコプター協議会会員、他。
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